クロージングのタイミング間違っていませんか?
試乗もした、説明も十分した、打ち解けあった、見積もりも出した、いい感じだ、よしっ、クロージング!
「でも、別のメーカーのこのモデルのことも検討してるんだよね…。」
「!?、あっ、そ、そうですか…」
それまでの自信はガラガラガラと崩れ、商談は振り出しに、頭はしばしパニックに…、引きつった笑顔が自分でもコントロールできない… よくある光景ですね。
敗因はなんでしょうか。
商談の敗因のほとんどは、自分ではお客さんと「いい関係が出来ている」と営業マンが勝手に思い込んで、売り込みに入ってしまうことです。
でも、実際にはぜんぜん関係が出来ていない…。
あなたを評価し、信頼しているかどうかを判断するのは、あくまでもお客さんです。営業マンではないのです。
むしろ「あなたの話にお客さんが気を使って合わせてくれていた」、と反省すべきでしょう。
仮にお客さんがあなたに心を許しているのであれば、もっと早いタイミングでお客さんの方からあなたに聞いてくるはずです。
「実はあのクルマも気になってるんだけど、実際のところどうなの?」と。
営業マンからアドバイザーヘ
お客さんだって分かっています。そのお店の営業マンがそのお店の扱うクルマを良く言うことを。
ビジネスだからそんなことは当たり前だという前提でお店にやってきてあなたの話を聞いているのです。
でも、当たり前のセールストークからあなたのプロとしての豊富な知識や、誠実な人柄がお客さんに十分伝わり始めると「営業マン vs お客さん」という構図から、「人と人」という関係に変化してきます。
お客さんは営業マンに対して「人」としての本音が聞けるのでは?、と期待しはじめるのです。
そして質問をしてくるのです。
「彼(彼女)なら本当のこと喋ってくれるんじゃないか?」と。「本音の相談ができるんじゃないか」と…
その瞬間から、あなたはテーブルを挟んでお客さんと対峙する席から、お客さんと同じ方向を見て一緒に最善策を探しあえるアドバイザーの席に座れる権利を得るのです。
さて、ここでよく話題になるのが「他社のダメ出しをする?しない?」という問題です。
他社批判は本当にNG?
いわゆる「デキる営業」になるための本に必ずと言っていいほど「デキる営業は他社の批判は絶対にしない」と書かれています。
でも、本当にそうでしょうか?
確かに、自分が気になって検討しているクルマを頭ごなしにケナされたら誰だっていい気分にはならないでしょう。
お客さんは、クルマに対してではなく、「そのクルマを選ぼうとしているお客さんのセンス」を批判されていると感じます。つまり自尊心が傷つけられるわけです。
だから不快に感じるのです。
ここでお客さんが抱いてしまった営業マンに対するマイナスイメージは、挽回するのがとても難しくなります。
いや、まず挽回不能と言っていいでしょう。お客さんは貝のように心を閉ざしてしまうのです。
ところが、そのダメ出しポイントが一人歩きをして、後々にお客さんの中で尾をひくケースがよくあります。
その時は、感情的に「ムッ」としたとしても、家に帰って冷静になると、その言葉がボディーブローのように効いてくるのです。
「あの営業マン、ここが良くないって言ってたけど、ん〜、確かに一理あるかも…」
人はプラスの情報よりもマイナスの情報が気になるものです。
「得をしたい」という感情よりも「損をしたくない」という感情の方が優先されます。
これは人も動物ですから、「ストレスから逃れたい」、「危険を回避したい」という本能が最初からDNAに組み込まれているからです。
それであれば、相手を不快にせずに、ボディーブローを打つ手はないのでしょうか?
検討しているライバル車がある場合はどのように対処したらよいのでしょうか?
ウザい営業にならないために気をつけるべきこと…
まず、まだお客さんとの信頼構築が全くできていないタイミングで他社モデルを批判することは絶対的にNGです。
仮に先ほど言った他社の批判ポイントが後々気になったお客さんが、あなたの勧めていたモデルを最終的に購入するという結果になったとしても、「あなた」、あるいは「あなたのお店」から買ってくれる確率は下がります。
あなたはお客さんにとって「ちょっとウザい人」のレッテルを貼られたままになっているからです。
悲しいかなお店も同類と見られてしまいます。
この信頼関係ができる前のタイミングでは、「あっ!◯◯ですか?人気あるみたいですね、よく比較されますよ。この前も同じようなお客さまがいらしゃいました。」
くらいにとどめておきましょう。
そして、その他社モデルのことを頭の片隅において、あなたの提案するモデルの特徴、優位性、お客さまのライフスタイルに影響を及ぼすメリットについて、説明していきましょう。
あなたのブランドのクルマ販売のプロとして、お客さんの信頼を勝ち得るかどうかが勝負の分かれ目です。
もし、先ほどのあなたが発した「この前も同じようなお客さまがいらっしゃいました」のコトバにお客さまが反応して「その方は、結局どうされたんですか?」と聞いてこられたとしたら、その答えは…? わかりますよね?
当然のことながら、「あなた」の勧めるモデルに決められた、ということを伝えます。
そのお客さんの家族構成や使い方、比較されていたポイント、何が購入の決め手になったのかなど… 第3者の具体例にお客さまは興味を示し、参考にしようとします。
営業マンの主観による説明は、信頼構築ができる前の段階では、お客さんは真剣に聞いていません。
「はいはい、マニュアル通りの説明ね」くらいのものです。
本音のアドバイスに徹しよう!
しかし、信頼関係ができた後の「アドバイザー」としての立場をあなたが得ていたなら、そのライバル車に対して良くも悪くもあなたの正直な評価をお客さまにしてあげてください。
それこそがお客さんが本心で望んでいることですから。
あなたから本音のコトバが聞きたくてお客さまはあなたに心を開いたのですから。
ただし、お客さまに「選択できる余地」を少しだけ残す答え方にしてあげた方が、あなたの商談を優位に進められる確率が高まります。
お客さんは、最後まで買い物の主導権を握っていたいのです。
それでは、次回はその具体的な進め方についてお話ししますね。