クルマ映画の傑作「カーズ」

ディズニー映画「カーズ」は見たことがあるだろうか?

クルマ好きのあなたなら一度は見た方がいい。

主人公の「フォードGT40」をモチーフにデザインされたレーシングカー「ライトニング・

マックイーン」がピストンカップと呼ばれるレースシリーズの優勝決定戦に出場するために

カリフォルニアへ移動中、旧国道66号線沿いの「ラジエター・スプリング」という田舎町に

迷い込む。

一匹狼だったマックイーンは、そこで出会った心優しい人(クルマ)達の心遣いから、友情や

チームワーク、愛情の大切さに気づいていく… という心温まるアニメーションだ。

この映画、本当にクルマ好きにもグッとくる演出が満載で、エンディングまで一気に見れる。

最初、私も子供のためにと思ってDVDを買ってきたのだが、あまりの面白さに子供よりも

のめり込んで見てしまった。

「このクルマはな、ポルシェ911って言うんだぞ」、

「このクルマはなぁ、ホンダのS2000」

「このクルマはなぁ、フィアットのチンクチェント」

「このクルマはなぁ、マツダの… 」

子:「ねぇ、お父さん、うるさい。」

私:「… 」

登場人物(車物)がすべてクルマというのが笑えるが(街灯に集まる虫までクルマ)、

ドリフト走行のコツみたいなドライビングのテクニカルな描写まで飛び出してくる。

クルマ好きのリサーチもしっかりとされて作られた映画なのだと思う。

しかし、単なる娯楽映画にとどまらず、利便性や合理化、お金が全てではない、という現代の

人間社会を皮肉った風刺画的な映画でもある。

♫「(Get Your Kicks On) Route 66」

ところで映画のエンディングテーマとして流れてくる「ルート66」という曲がある。

この映画の中では、人気女性シンガー「テイラー・スイフト」の元カレとしても有名な

「ジョン・メイヤー」がブルージーなギターをかき鳴らしながら歌っている。

この曲は古くは「ナット・キング・コール」や「チャック・ベリー」、そして「ローリング

ストーンズ」もカバーした名曲。

1946年に生まれたジャズのスタンダードナンバーだ。

「カーズ」の舞台にもなったこの国道66号線は1926年に創設された。

残念ながら州間高速道路、いわゆる「フリーウェイ」が発達したために、1985年に廃線となり、

実際の地図上からは消えた国道だ。

しかし、アメリカのど真ん中を突っ切るように東西に走るこの道は、アメリカの「メインストリート」

とか「マザーロード」などと呼ばれ、モータリゼーションの幕開けとともに輝かしい時代の象徴

ともなった。

ちなみに66号線は、イリノイ州シカゴとカリフォルニア州サンタモニカを結んだ総延長3755kmの

国道。

北海道の稚内から沖縄の那覇までが約3500kmだから、それよりもさらに長い!

アメリカ西部の発展に貢献するとともに、ある意味、アメリカ文化発祥のメインストリートとも

なった道だ。

映画だけにとどまらず、小説や音楽にも数多くこの「国道66号線」が取り上げられている。

もう公式な地図には載らないが、アメリカの人々に愛され、アメリカ人の心の中を走り続ける

不滅の道だ。

歌の中には、その「66号線」がはしる街々が登場する。

イリノイ州シカゴに始まり、ミズーリ州セントルイス、同ジョブリン、オクラホマ州オクラホマ

シティー、テキサス州アマリロ、ニューメキシコ州ギャラップ、アリゾナ州フラッグスタッフ、

同ウィノナ、同キングマン、カリフォルニア州バーストー、同サンバーナディノ、そして

ロスアンジェルス(LA)だ。

いわゆるブルース進行の12小節を1つの歌とした楽曲スタイルに軽快なリズムが絡まる。

まさにドライブにうってつけの楽しい曲だ。

アメリカ大陸の広い空へ続くような1本の道…

その見果てぬ先に、気心知れた仲間とロマンを求めて走り続ける…

そんな風景が浮かんでくる。

映画の中ではしかし、フリーウェイの完成とともに次第に客足が遠のき、かつて栄えた66号線

沿いの街が錆びれて行く姿が描かれている。

日本で言えば、モダンな大型ショッピングモールが郊外に進出してきたために、昔賑わっていた

商店街のお店の灯が消え、次々とシャッターが閉められて行く… そんな感じだ。

「カーズ」では、そこに主人公のマックイーンが現れて、ドタバタ劇を繰り返しながらも、

街が活気を取り戻していく…

アメリカンドリームを夢見て…

私は大学生時代、約2年半をアメリカで過ごす幸運に恵まれた。

初めてアメリカ大陸にわたり、セントルイス(ミズーリ州)の空港から目的の場所まで約2時間

ほどをバスに揺られて移動した。

最初に思ったことは「スゲーッ!クルマが右を走ってる!」…

当たり前だが、ものすごく違和感を感じたことと、「あ〜、ここはアメリカなんだ!」とようやく

理解した。

それともう一つ、なぜだか感動したのは「あっ!日本車が走ってる!」…

アメリカに来ていると認識した直後だからこそ、いつも見ていた日本車が走っている姿に、

見知らぬ土地で会う同郷の友のような懐かしさと(来たばっかりなのに)、愛おしさを感じてしまった。

郊外に出る前に、大学まではまだ時間が掛かるので先に夕食を済ませておくようにということで

立ち寄った先が、なんと「マクドナルド」。

さすがアメリカならではの粋?な計らいである。

(この後、何度もマクドナルドにはお世話になったが、夕食がマックというのはアメリカでは至って
フツウ。むしろちょっとしたご馳走だった。私にとっては…)

でも、マクドナルドと言ってもバスを降りる瞬間から心臓がバクバクと高鳴り始めていた。

なんせ初めて英語で、本場のマックの店で注文をするのだ。

注文を出す列に並んで、いよいよ私の番になった。

私は緊張しながら、ちょっとファットな白人女性の店員さんと向かい合った…

私:「チーズバーガー プリーズ!」

店員:「OK! One Cheeseburger」

通じた!!

私:「ポテト!」

店員:「Potato ?…  French Fries ?」

私:『!?」やばい、通じてない。なんか聞かれてる…

日本で言う「フライド ポテト」はアメリカでは「フレンチ フライ」となるのだ。

私は焦ってつい「Yes !」と答えた。

「NO! と言えない日本人」みたいなタイトルがよくあるが、まさにそのタイトル通りの典型的

日本人と化していた。

ドリンクはコーラのLサイズを注文したが、出てきてビックリ!

日本のLサイズが向こうのほぼMサイズで、どうだろう、容量的には日本のLサイズの2倍くらい

あるバケツのような容器のドリンクがデ〜〜ンと出てきた。

ポテトのサイズもデカかったが、私はアメリカのスケールの大きさと、まさに大雑把さにのっけから

打ちのめされていた。

アメ車のサイズのデカさも、走る道路の車線の広さも、田舎道に入って目にした地平線まで続くような

トウモロコシ畑の広さも、そこに停められていたトラクターのデカさも、もう目に入ってくるもの

全てがデカかった。

これは、今のインターネットを通したパソコンやスマホの画面からでは、逆立ちしても絶対に

伝わらない圧倒的なスケール感と情報量だ。

すべてがメガスケールの国「アメリカ」

私が通った大学はイリノイ州にある「サザンイリノイユニバーシティ」と呼ばれる大学で、留学生に

広く間口を解放している学校だった。

敷地内にちょっとした湖があるような広大なキャンパスは、端から端まで自転車でゆうに10分以上

かかったので、授業の取り方が悪いと教室から教室までダッシュして移動する必要があった。

とにかく、何でもかんでも広くてデカイのがアメリカの流儀なのだ。
(「大」とか「広」という単語を呆れるほど使わないと表現できない国だ。)

そこについていけないと、この国ではやっていけない。

さらにそこで成功しようとすれば、相当頑張って目立たないと群衆の中に埋没する。

学校のほぼ中央に「Student Center」と呼ばれる大きなカフェテリアがあって、ネイティブから

留学生に至るまで、ありとあらゆる国籍と地域の人たちでいつも賑わっていた。

テスト前になると図書館や、この「Student Center」でよく勉強した。

本当に次から次へとテストがあるので、常に教科書を読んでいないと授業に追いつけない。

人生でもあんなに勉強した時期は、なかったと思う。

私にとってはかけがえのない青春の1ページだ。

アメリカにいた頃にはいろんな思い出があるが、その中でも絶対に忘れることのできない特別な

モノがある。

この広大なアメリカ大陸の中西部、およそ10,000kmをクルマで走破したのだ。

旅の途中、クルマのトラブルに見舞われながらも、あの荒野を駆け抜けた経験は、生涯忘れる

ことのない私の財産だ。

クルマのことを理解しようとした私にとっての原点かもしれない。

私の心に記録されたその映像は、私の心の再生装置でなければ再生ができないので、申し訳ないが

コトバでそれを映像化してみようと思う。

そしてその旅から得られたクルマの素晴らしさを伝えてみたいと思う。

(私の国道66号線、その2へつづく)

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