MATSUDA RX-Vision の見込み客

いよいよ第44回東京モーターショーが開幕した。

すでに様々なメディアで報じられているので、ご覧になった方も多いだろう。

各社、様々な自社の独自性をアピールしていて久々に見応えのあるモーターショーになっていると

思うのは私だけではないはずだ。

MATSUDAが久々のロータリーエンジンを搭載したコンセプトモデル「RX-Vision」を発表して

人だかりができているという。

91年、あのルマン24時間耐久レースで日本のチームとして初の総合優勝をもたらし、世界に

ロータリーのマツダを決定的に印象付けた伝統のエンジンだ。

おそらくこのロータリーの復活を興奮して見ているのは、40代以上のおじさんたちだろう。

70年代に巻き起こった「スーパーカーブーム」が絶頂期を迎えた時に、マツダがロータリー

エンジンを搭載してデビューさせた初代「サバンバRX-7」は、少年たちのハートを激しく

揺さぶった。

当時の子供達にとって、スーパーカーと言えば、「ランボルギーニカウンタックLP400」や

「フェラーリ512BB」が超人気で、そのどれもがヘッドライトがボディーに格納されるという

いわゆる「スーパーカーライト」スタイルにシビレまくっていた。

つまり、「スーパーカー」=「隠し目ライト(リトラクタブルライト)」という図式が成り立って

いたのだ。

(当時の子供達はみんな格納式のスーパーカーライト付き自転車に乗って、プチスーパーカー

オーナー気分に浸っていた)

そんなところに、隠し目ライトのスタイリッシュな「RX-7」が登場したものだから、今風に言うと

「ヤバイ!」と相成った。

カウンタックやフェラーリなんてクルマは、それこそ雲の上の存在で、近くの文房具屋やおもちゃ

屋で売っているプラモデルくらいでしか見たことがなかった。

だから「RX-7」は田舎に住む鼻垂れ小僧たちの町にやってきた、待望の和製スーパーカーだった

のだ。

「RX-7」が登下校中に走っている姿をみつけると、みんな「あッ、スーパーカー!」みたいな

ノリで振り返った。

だからその世代の人たちにとっては印象深いクルマとして今も心に刻まれている。

もちろんその後にリリースされたFC、FD、そしてRX-8に愛着のあるユーザーもいるだろう。

つまり、もし「RX-Vision」が正式に発売されたら、その辺りの人たちがまずは最初のターゲット

層であり、見込み客であることは間違いない。

だれでもいいから勧めようとしても徒労に終わるだけだ。

まずはロータリーエンジンを1度でも所有したことのある人たちをリサーチして、その人達に

徹底的にアピールすることが大切だろう。

言ってみればマツダロータリーエンジンのサポーター、ロータリーエンジンのロイヤルカスタマー

に厚い待遇、「おもてなし」を施すのだ。

ロータリーエンジン、RX-7、RX-8にお金を払ったことのあるユーザーが、1番クルマのことを

理解してくれているし、もう一度買ってくれやすい。

それでは新規の見込み客はどうやって獲得するのか?

ロータリーエンジンが顧客に約束するもの

マーケティングとしては、マツダのUSP(Unique Selling Proposition)の1つは、ロータリー

エンジンであることには間違いない。

この技術のノウハウはマツダにしかない。

そして誰も追従できないレベルに到達している。

まさに孤高の存在だ。

それであれば新しいお客さんを引き付けるために、この伝家の宝刀を抜かない手はない。

もちろんレシプロエンジンとは異なるロータリーエンジンが、どのようにユーザーのために

役立つのか、何がお客さんの心に響くのかを営業マンは考えないといけない。

特に新規のお客さんにとってはロータリーエンジンのメリットが理解できないと、いくらそれが

唯一無二の武器だとしても、それを買う理由につながり辛い。

もちろん、「RX-○」が持つロータリーエンジンを上回る他のメリットをお客さんが感じてくれ

ればそれでもぜんぜんOKだ。

とりあえずセールストークを作る事前準備としては、無機的なスペック(特徴)をお客さんの

欲求を満たすベネフィットに変換する。

このクルマを買うと、どういう素晴らしい結果をお客さんに約束できるのか。

あるいは、このクルマはお客さんのどんなイライラを解決してくれるのか。

まずは特徴をリストアップして、それらを全てベネフィットに変換して書き出してみよう。

例えば…

①ロータリーエンジンの特徴は、ピストンが上下に動くレシプロエンジンと違い、ローターが

回転して出力を得ている。だから…

②回転運動なのでエンジンのフィーリングがモーターのように滑らかでスムーズ。だから…

③スムーズな回転なので振動が少なく静か。だから…

④振動が少なく、静かなのでドライブフィールが上品。だから…

⑤上品なので知性的な印象を受けてモテるかも。

他にもロータリーエンジンの特徴は、「速い」「高回転」「軽量」「コンパクト」等々あるので、

これらを5段活用ぐらいまで掘り下げて、人間の根源的な欲求にまで追い込んでゆくのだ。

スポーツカーだからと言って、カリカリの運動性能だけがお客さんの欲求を満たすベネフィットに

なるとは限らない。

色んな特徴を50個くらいあげて、その特徴がお客さんのどういう欲求を満たし、どういう

イライラを解決するのかを具体的にしていこう。

「自動運転」がパラダイムシフトを起こす日

ロータリーエンジンのことばかり話してしまったが、今回のモーターショーで最も注目度の高い、

話題になっている技術が「自動運転」だ。

各社が今、最も力を注いで開発をすすめており、東京オリンピックが開催される2020年までに

ある程度の実用化を目指しているという。

2020年と言えば、あと5年ほどしかない。

それぐらい「マジ」なのだ。

実際に技術的にはほとんど確立されていて、あとは法整備などをしていつ実用化するのか、という

段階まで来ているという。

自動運転は、つまるところ「運転しなくてもクルマが勝手に目的地まで連れて行ってくれる」と

いうところがミソなので、別の見方をすれば「誰でも運転手付きのリムジン」が買える時代に

なったということだ。

ま、リムジンとまではいかなくても、「クルマを買えばもれなく運転手が付いてくる」という

具合だ。

子供の頃に「あったらいいなぁ」と思っていたドラえもんの「どこでもドア」の原型と言っていいかも

しれない。

急速な高齢化社会に突入している日本では、自動運転は特に高齢者にとって実に意味のある技術だ。

つい数日前も高齢者が認知症で暴走し多数の死傷者を出したというニュースが世間を騒がせた

ばかりだ。

また、将来的に日本人の2人に1人は発症すると言われている代表的な成人病の1つ「糖尿病」も

低血糖症による意識の喪失で自動車事故の可能性が高まる。

老化による視力の低下や判断の遅れが事故の確率を高めてもいるだろう。

いずれにしても人間の身体的な不足分を自動運転は補ってくれ、労せずとも自分の行きたい

ところへ安全に行けるというベネフィットがある。

お役所的にも自動車事故が減ればそれは結構なことだ。

将来的に自動運転化によって事故が劇的に減少することが実証できれば、手動運転が法律で禁止

されるなんて時代が来るかもしれない。

自動車免許なんて制度も無くなるのだろう。

自動車保険の加入者も激減するかもしれない。

高速道路に行くと、無人の大型トラックが荷物を満載して走っているのかもしれない。

多忙なビジネスマンはクルマの移動中でも会議やレポート作成の時間として普通に割り当てられる。

完全なるモバイルオフィスの構築も可能になる。

どうどうとクルマの中で居眠りができる。

帰りに一杯ひっかけてもいける。

旅行中に「パパ〜、まだ着かないの〜?」と責任転嫁されずにすむ。

自動運転は自動車を取り巻く社会の大きなパラダイムシフトを起こす可能性を秘めている。

この変化は自動車のビジネスに関わる全ての人に関係があるので、是非、注視して欲しいと思う。

ビジネスの方向転換を余儀なくされる人もいれば、とんでもないビジネスチャンスが訪れる可能性

もある。

「手動運転」よ永遠なれ

でも、「手動運転」というクルマを操る楽しみは無くなってしまうのだろうか?

私は、無くならないと思うし、クルマ好きの端くれとして無くなって欲しくないと願っている。

ロールスロイスはお抱え運転手付きの、いわゆるショーファードリブンかーだが、運転を楽しみ

たい貴族のためにパーソナルカーとしてベントレーがある。

狩猟を楽しむためにレンジローバーがある。

スポーティーな走りを楽しむためにアストンマーチンがある。

やはり、使用の用途別に特化したブランドがあり、自らの感性でそれを操り、その違いを

味わうところにクルマ選びの楽しさがあると思う。

いずれにしても、この自動運転のベネフィトは別の機会に掘り下げてみたいと思う。

営業マンが東京モーターショーで見るべき9つの注意点

さて、これまで何度もクルマの営業マンは東京モーターショーへ行こうと呼びかけているが、

実際に東京モーターショーへ行ったら何を気をつけて見るべきか?

綺麗なコンパニオンに自ずと目が行ってしまうのは仕方ないが、少なくとも次の点は注意して

見て、書き留めておこう。

①あなたの扱うブランドの特定のモデルを5分以上見続けているお客さんのスタイルや雰囲気。

②友人や家族と何を話題にしているのか?そのクルマの何に関心があるのか?ダメ出しは何か?
(お客さんに直接聞いてみてもいいだろう)

③お客さんがメーカーのプレゼンテーションの中で、どのポイントに反応しているのか?
(うなずいているような仕草のポイントを観察する)

④フードコートや休憩しているお客さんたちは、何を話題にしているのか?何が良かったか?
何にがっかりしたか?

⑤新型車が出ていれば、どんなお客さんをターゲットにそのモデルは開発されたのか?

⑥既存モデルで新しく何か変わったポイントはあるか?

⑦特別仕様車、期間限定モデル、あるいはキャンペーン等が近々に発表される予定はあるか?

⑧競合はどんなモデルをリリースしてきたか? 価格はどれくらいか?特徴は何か?

⑨競合モデルを注意深く見ている人は何を話題にしているか?何が良くて、何がダメか?

これらの注意点は全て営業マンの視点で考慮したものだ。

とかく商品ばかりに目が行きがちになるが、営業マンとして最も重要なのはお客さんの動向だ。

お客さんが何を求めているのか、あるいは何を求めていないのか?

そのクルマで何を解決しようとしているのか?

あなたのお客さんリストの中から新しいクルマと何かつながるポイントがあれば、そのお客さんに

新しい提案が出来るようになる。

クルマの特徴をベネフィットに変換し、そのベネフィットを喜ぶであろうお客さんと結びつける。

そうすれば、あなたの顧客リスト、見込み客ノートの中にある多くのお客さんにアプローチする

口実が出来るのだ。

もちろんあなた自身が、新しいコンセプトや新しいクルマにも夢を見て欲しいが、何よりもクルマ

販売のプロとして、お客さんに夢を見させてあげて欲しい。

とにかく提供者側の熱意やクルマに対する深い理解が、お客さんを、そして市場を動かして行く

原動力になることに間違いはない。

是非、東京モーターショーをあなたの営業力の糧になるように活用してみよう!

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