「スマホ」ならぬ「スマカ」の提案はモーターショー来場者に不評?
東京モーターショーへ行ってきました。
今後の自動車業界の向かって行く方向が、はっきりと見えた感じがしました。
リーマンショック以降、しばらくクルマ業界の共通したテーマは「エコ」でした。
しかし、今回のモーターショーの共通した主なテーマは「自動運転」。
スマートフォンが「スマホ」なら、スマートカー「スマカ?」「スマ車?」とも呼ぶべき画期的な
自動車の登場です。
会場となった東京ビックサイトの西ホールの一角に「Smart Mobility City」と命名されたコーナーが
設けられて、自動運転の試乗体験や、各メーカーの取り組みが案内されていました。
しかし、始まったばかりのテクノロジーということもあってか、まだ一般の人々への浸透度は薄いと
みえて、綺麗なお姉さんのデモンストレーションがある時は人だかりができるものの、それ以外の
時間ではスルーして行くお客さんも多かったように見えました。
まだ、自分たちのリアルな生活の中で、どのようなベネフットがあるのか、どんな活用の仕方がある
のかが想像がつかないのだと思います。
最近の報道のされ方をみると、高齢者の事故防止のための機能のようなイメージになってしまっている
のかもしれません。
もちろん、交通事故を減らし、移動自体が大変な人たちのサポートをすることはとても重要です。
しかし、この「自動運転」という技術は、以前のブログでも書きましたが、自動車業界のみならず、
他業種をも巻き込んだ社会全体のパラダイムシフトを起こす可能性を秘めたテクノロジーです。
そして、急速に世の中へ浸透し、市場が拡大すると思われます。
国家プロジェクト「自動運転」はアベノミクスの根幹となるか?
なぜなら、これは国を挙げての官民一体となった国家プロジェクトだからです。
2013年6月に「日本再興戦略」- Japan is Back – なる政府の宣言が行われたことはご存知で
しょうか?
その戦略宣言の中で、「安全運転支援、自動走行システムの開発・環境整備」という項目があり、
さらにその中の「世界最先端IT国家創造宣言」では、「高度運転支援技術・自動走行システムの開発・
実用化等の推進」と盛り込まれています。
そしてつい先月、小泉進次郎元内閣府大臣政務官が「国家戦略特区」- 完全自動走行(レベル4)の
実現に向けた具体的プロジェクト – と題した概要を発表しました。
ここで述べられていたことは、ちょっと難しい言い回しかもしれませんが
「官民ITS構想・ロードマップ2015」における自動走行システム、いわゆる「レベル4(完全自動
走行)」までの技術開発を目指し、適切に実証実験を実施し、その効果を検証していくことが
必要である。
※ITS:高度道路交通システム(Intelligent Transport System)
となっています。
簡単に言うと、「日本みんなで自動運転化をすすめていこう!」ということです。
「自動運転のレベル」は洗濯機と一緒。
ところで「レベル4」とはいったいなんでしょうか?
このレベルとは自動運転の「どこまでクルマがやってくれるの?」という段階を示しています。
分かりやすくするために洗濯機に例えると、洗濯 – すすぎ – 脱水 – 乾燥 のどこまでを自動で
やってくれるの?みたいな感じです。
レベル1:加速(アクセル)、操舵(ハンドル)、制動(ブレーキ)のいずれか1つの操作をクルマが
やってくれる。→ <洗濯のみ自動>
レベル2:加速(アクセル)、操舵(ハンドル)、制動(ブレーキ)のうち2つ以上の操作をクルマが
やってくれる。→ <洗濯とすすぎが自動>
レベル3:加速(アクセル)、操舵(ハンドル)、制動(ブレーキ)のすべての操作をクルマがやって
くれる。(但し、緊急時は運転手が操作)→ <洗濯とすすぎと脱水が自動。でも乾燥は自分で干して>
レベル4:加速(アクセル)、操舵(ハンドル)、制動(ブレーキ)のすべての操作をクルマがやって
くれる。(運転手が操作に関与しない)→ <洗濯とすすぎと脱水と乾燥み〜んな自動>
つまり「レベル4」とは、極端な話、ドライバーが何にもしなくても、クルマが勝手に運転してくれる
のです。
やっちゃえ!
今、いろんなメーカーが有名タレント使った自動ブレーキのTVコマーシャルを流していますが、既に
新型軽自動車の6〜7割には、(レベル1)に相当する自動ブレーキが装備されています。
そして2017年には、トラック、バスの新車には自動ブレーキの装着を義務化することが決められてい
ます。
今、政府はかなりのスピード感でこの自動運転化を進めていて、来年初めからは湘南を皮切りに、仙台、
名古屋で乗客を無人で目的地まで運ぶ自動運転タクシーの実証実験を始める、とも発表しました。
そしてこの自動運転技術を駆使して交通事故による死者数を現在の年間約4000人から、2018年末頃
までに2500人以下にしようと目標を立てています。
現在、事故原因の実に96%が運転者の過失によるものです。
ならば、この過失の原因となる「人間の操作」を排除して、運転をコンピューターに任せてしまえば
事故は確実に減るというわけです。
そして2020年には、自動運転を「レベル3」まで押し上げる目標としています。
なぜ、そんなに急ぐのでしょうか?
オリンピックというサイトの日本国マーケティング
それは、ずばりその2020年に開催される「東京オリンピック」に間に合わせるためです。
先の「世界最先端IT国家創造宣言」にもあったように、世界中から注目のあつまるオリンピックは、
その自動運転の技術を世界に知らしめるために絶好の機会というわけです。
マーケティング的に言えば、アクセス(トラフィック)が最も増えるこのタイミングを逃す手はない、
といったところでしょうか。
そしてこの計画の中には、この自動運転を含む交通マネージメントとインフラをパッケージ化して
輸出ビジネスを創出する計画も進められているのです。
つまり、たくさんのアクセスから、たくさんのリード(見込み客)の獲得を目論んでいるのです。
とにかく、政府はこのオリンピックが始まるまでに、何が何でも自動運転を普及させ、人々に認知
させる施策を打って出てくるでしょう。
今、政府を含め、トヨタ、ホンダ、日産が競争と協調をしながら開発を加速させている背景には、
やはりITの巨人、グーグルが開発中の「Google Car」の存在も大いに気になるところだと思います。
自動車産業は日本の経済を支える大きな柱であることからも、ここでは何としてもその主導権を、
別畑の企業に奪われたくないと考えるのも至極当然といえるでしょう。
いずれにしても、「自動運転」の流れは急激にやってくると思います。
クルマ屋とクルマの営業マンは何したらいい?
さあ、それではその販売の最前線に立つ営業マンとしては、何を準備していけばいいのでしょうか?
人類がこれまで経験したことのない交通環境が生まれようとしている今、クルマ屋としては何を
すべきなのでしょうか?
次回は、その考察をしてみたいと思います。
いずれにしても、大変革期が迫っていることは確かです。
しかもすぐそこまで…