人はなぜ「人見知り」をするのか?
お店の前の駐車場に1台のクルマが入ってきました。
お客さんのご来店です。
「あ、お客さんが来られたぞ」
ちょっとした緊張感がお店の中に走ります。
だれでもそうですが、初めて会う人には何かしらの恐れを感じます。
よほど人に慣れているイヌやネコでもない限り、動物は初めて出会うものに対しては警戒するようにできています。
目の前にいる「それ」は私の身に害を与えはしないだろうか?
まず、そんなふうに感じるようにDNAに組み込まれているわけですね。
これはもう動物の本能なのでしかたありません。
人間も動物なので、そう感じるように出来ています。
だから何年も営業をやっていても初めてのお客さんが来店されるときは緊張するのです。
でも注意すべきは、営業マン以上に「お客さんの方が緊張している」ということです。
それはなぜなのか?
人がモノを買う時の3つの原則
それでは、買いものをするときの人のメカニズムを見てみましょう。
販売には大きく分けて3つの原則があります。
①人は売りつけられることが大嫌い。
②人は合理的な理由ではなく、感情的な理由でモノを買う。
③感情的な意思決定による買い物を、買った後に理屈で正当化しようとする。
今回は、①の「人は売りつけられることが大嫌い」にフォーカスします。
そもそも「買いもの」とはその人の欲求や問題を解決してくれる商品やサービスを手に入れるための行為です。
人間は無限の欲求とたくさんの問題をいつもかかえています。
だからそれを解決するための買いものは、みんな大好きなのです。
でも、「買いもの」は好きなのに「売りつけられる」ことには、ほとんどの人が嫌な感情を持っています。
むしろ条件反射的に「拒絶」するといってもいいでしょう。
まず、ほとんどの人がその商品やサービスが問題解決に本当に役立つのかを疑います。
人間は、同等もしくはそれ以上の価値を手に入れることよりも、今持っている何かを失うことの方を恐れます。
失うことへの恐怖は、何かを手に入れたいという願望よりも強いのです。
買いものの場合であれば、大事なお金を無駄なものを買って失いたくないわけです。
「No」と断れずに、欲しくもないものを買わされてしまったらどうしようと怯えているのです。
つまりお客さんは「手に入れたい」という願望をもってお店にやってくるのですが、同時に「売りつけられるのでは?」という恐怖心も持っているのです。
営業マン達が手ぐすね引いて私のお金を巻き上げてやろうとほくそ笑む館にノコノコと出向いていくんだ、などと考えながらお店の入り口をくぐるのです。
お客さんの前に立ちはだかる「氷の壁」を溶かす
まず、お客さんにとって営業マンというのは、「モノを売りつけてくる人」という先入観があります。
(ま、事実そうなんですけどね)
だからお客さんの心から「売りつけられる」という疑念を取り払うところから始めなければいけません。
この作業を「アイス・ブレイキング」と言います。
この営業マンとお客さんとの間にある巨大な氷の壁を溶かさないまま商談を進めても、必ず失敗に終わります。
つまり最後までお客さんはあなたに対して心を開いてくれなかったということです。
でもあなたのことを「売りつけてくる人じゃないんだ」とわかった途端に「招かざるやっかいもの」から「歓迎すべきアドバイザー」のポジションを獲得できるのです。
だってもともとそれが欲しくてお店に来てるわけですからね。
では、「歓迎すべきアドバイザー」になるためには、どうしたらいいのでしょうか?
第一印象で注意すべき3つのこととは?
初めてのお客さんと相対した時、一番大切なのは「第一印象」の与え方です。
お客さんが最初に感じたあなたの印象は、ほぼ商談の最後まで続くと言ってもいいでしょう。
だからネガティブな要因となるものは極力排除するようにします。
ネガティブなイメージを与える要因は大きく分けて以下の3つから生まれます。
①身だしなみ
当たり前ですが身だしなみはメチャメチャ重要です。
「清潔感」には徹底的にこだわりましょう。
特に女性はこの辺りをものすごくチェックしています。
(服装)
・シャツの襟や袖口、靴が汚れていないか。
・ジャケットの肩にフケなどが付いていないか。
・ボタンが取れていたり、取れかけていないか。
・体にフィットした服装か。(妙にブカブカの服になっていないか)
・クリーニングにしばらく出してなくてシワだらけになっていないか。
・全体的にクタびれた感じになっていないか。
(顔など)
・髪に寝グセがついていないか。
・目ヤニはついていないか。
・鼻毛が出ていないか。(意外に自分では気づかない)
・口臭は大丈夫か。
・爪が伸びていないか。(黒く汚れていないか)
②あいさつ
「いらっしゃいませ!」があなたがお客さんに向けて発する最初のコトバになるはずです。
たった8文字ですが、あなたのキャラクターに合った一番感じのいい「いらっしゃいませ!」が言えるように次の点を注意しながら練習しましょう。
・声の高さ:お客さんに聞き取りやすいトーンになるように。
・声のテンポ:スピードはどれくらいが聞き取りやすいか、ゆったりした演出か、元気のいいアップテンポな感じか。
・声のイントネーション:かしこまった落ち着いた感じか、ちょっとフレンドリーな軽妙な感じか。
・声のボリューム、張り;お客さんにちゃんと伝わる声の大きさか。滑舌よく口ごもっていないか。
③笑顔のディテール
「笑顔」の印象が良ければお客さんとの氷の壁を早く溶かします。
2人で練習して、相手が感じる一番印象のいい笑顔ができたら、その状態がいつでもできるように顔の筋肉に覚えさせます。
・口元だけの笑い顔になっていないか。
・苦笑いのようなイメージになっていないか。
・目はお客さんの顔に向けられているか。
※瞬時にこの笑顔ができるように訓練しておきましょう。
プロのモデルさんやコンパニオンは、いつも鏡を見ながら笑顔の練習をしています。
お客さんとのファーストコンタクトは、この3つがお客さんに伝わる営業マンの情報になってきます。
ここでお客さんに、「不潔」、「だらしなさそう」、「暗い感じ」、「冷たい雰囲気」、「おどおどしている」という印象を与えてしまうことは「百害あって一利なし」です。
しかも営業マンの努力で、すぐにでも練習して改善できます。
もちろん、これだけやればお客さんとの間にある氷の壁をすべて溶かしたり、打ち砕いたりできるわけではありません。
しかし、「いい印象を与える」よりも先に「悪い印象を与えない」ために自分の基準を上げる練習をしていきましょう。
このあたりのケアが出来てくるということは、そのあとに続く会話にも配慮ができるマインドが育っていきます。
最初につまずかないことが、その後の商談を優位に進めるためには不可欠です。
ゲーム開始直後に失点すると、挽回するのが大変ですからね。
まずは、出来ることからあなたの営業力を高めていきましょう。