「身だしなみ」「あいさつ」「笑顔」の次にすること
さて、前回は「第一印象」をよくするための身だしなみ、あいさつ、感じのいい笑顔の作り方の話をしました。
第一印象が良ければ、次のステップに移りやすくなるのは言うまでもありません。
しかしそれだけでお客さんの心を開いてもらうことはできません。
別のお客さんからの紹介でもない限り、あなたへの信頼度はまだ「0」の状態です。
この信頼をどうやって築いていくのかが「第一印象」の次にやらなくてはならない、あなたの作業です。
野球で言えば、「第一印象」の良さでお客さんをまずは1塁には出塁させ、次にお客さんを何とかして2塁へ送って得点圏に進塁させなければなりません。
それでは「信頼」とは、どうやったら得られるのでしょうか?
アイスブレイキング
まずは、お客さんがどんな気持ちでお店に入ってこられるのかをあなたがよく理解する必要があります。
基本的にお客さんと営業マンは「買う人」と「売る人」という180度正反対の立ち位置にあります。
いわば対立している関係です。
前回の話の中で「アイスブレイキング」という話をしました。
お客さんと営業マンとの間にある「見えない氷の壁」をどう溶かして取り払って行くかという作業です。
また人は売りつけられることが大嫌いという話もしました。
つまり「見えない氷の壁」とは「売り込まれるかもしれない」という営業マンに対してお客さんが抱いている「警戒心」です。
お客さんは、「買いたいけど、売り込まれたくない」という「欲求」と「警戒」の感情が同居している状態です。
であれば、この「警戒心」を取り払うために、対立する立ち位置からお客さんの立つ位置にあなたが移動しなければなりません。
同じ方向を見て一緒に問題を解決していこうという姿勢を見せる必要があります。
なんども言うように「買い物=問題解決」です。
お客さんに「私は、あなたに売り込んだりしませんよ」「私はあなたの味方ですよ」「あなたの悩みの解決のお手伝いをしますよ」とわかってもらわなければなりません。
クルマのコンシェルジュをめざせ!
なぜかクルマの「営業マン」は、一般的には「売り込んでくる人」という先入観が強いように思います。
この人々の「思い込み」のようなものが、お客さんの心をさらに閉し気味にしていることもあるでしょう。
でも「営業」という職種のイメージを上手に別のイメージに変えている企業もあります。
大型の蔦屋書店の書籍や音楽コーナーには「コンシェルジュ」と呼ばれるスタッフがいます。
彼らは本や音楽の豊富な知識を生かして、お客さんの質問に答えたりアドバイスをしています。
お客さんの探しているものや、お客さんの持っている漠然としたイメージからそのお客さんへの適切な商品を紹介しているのです。
ここで注目すべきはお客さんとコンシェルジュとの関係です。
少なくともお客さんは「コンシェルジュ」に対して、「売り込まれる」という感覚は持っていません。
最初から「頼りになるアドバイザー」という認識です。
もしかしたらその道の「先生」と捉えているかもしれません。
でもやっている仕事の内容としては、営業となんら変わりはありません。
ただの案内係ではないのです。
このあたりの考え方や見せ方は大いに参考になるところです。
クルマ屋さんとしても、お店全体で何か新しい表現の仕方をお客さんに提案することも必要でしょう。
お客さんがあなたの友人だったら…
それでは営業マンとしてのあなたは、どのようにお客さんの「警戒心」を取り払えばいいのでしょうか?
まず重要なのがあなた自身の心構えです。
「さあ、売るぞ!」と心で思うことはとても大切な意識だと思いますが、「売りつけてやるぞ!」とは思わないことです。
先ほど言ったようにお客さんの立ち位置にあなた自身が歩み寄らなければなりません。
ではどうやって歩み寄るのか?
こういうシチュエーションが実際に起こり得る身近な例を思い浮かべてみてください。
例えば、あなたがあなたの親や友人や身内に何かを紹介したり、勧めたりすることを想像してみてださい。
恐らくは、強引にそれを勧めたり、押し付けようとすることはしないはずですよね。
あくまでもあなたはその道のプロとして、アドバイザーの役に徹することでしょう。
だからあなたの心持ちとしては、お客さんをあなたの親しい友人や家族に見立てて接するように心がけてみてください。
説明の仕方がフレンドリーで優しい感じになると思います。
ウマの合う人を探すも大事、ウマを合わせるのも大事
次にお客さんのテンションを読み取ってください。
以前のブログにも書きましたが、人は自分と同じ価値観や、同じノリ、同じテンションを持つ人に安心感を覚えます。
安心感を持ってもらえれば、それだけ心を開いてくれやすくなる確率が高まります。
無口でテンションが低く、口を開いても弱々しい話し方のお客さんに対して、やたらハイテンションでコトバ数を多く接しても、相手に煙たがられます。
逆にやたらハイテンションで饒舌なお客さんに、ローテンションでコトバ少なに臨めば完全にお客さんのペースに振り回されます。
こうなるとお客さんはもうあなたのことをアドバイザーとも思わず、下手をすると召使のような扱いをし始めます。
当然、信頼も得られないし、なめられっぱなしの商談になってしまうでしょう。
これまでの経験上、まずお客さんのテンションや状態を読み取って自分なりにそれをコピーします。
そしてここが肝心ですが、コピーしたお客さんの状態よりもあなたの状態を1〜2割くらい高めにします。
口数、声の大きさ、声のトーン、話すスピードなどです。
お客さんと同じようなテンションで安心感を与え、でもお客さんよりもあなたのテンションをやや高めにすることで、お客さんがあなたに引っ張られるという関係を作ります。
この状態が作れると、商談をあなたのペースで進めやすくなります。
よく商品説明の前に雑談で場を和ませるといい、なんてことが営業の本などには書いてありますが、別に無理に雑談をする必要はありません。
自然の流れにまかせましょう。
とってつけたようなマニュアル通りの雑談は、むしろ場を白けさせるだけです。
(でも高確率でお客さんの笑いを誘うようなキラートークがあるなら、それを有効活用してください。)
あなたはクルマ販売のプロとして、お客さんにそのクルマのことを一生懸命説明してあげてください。
日々の努力なくして「信頼」の獲得もなし
ここでクルマに対する「知識の豊富さ」や「語りの熱っぽさ」、あなたの「誠実な態度」がお客さんに伝わるかが鍵になります。
「この人よく勉強してるわ」「商品への想いが伝わってきた」「真面目な人柄とわかった」
お客さんにそんな印象が与えられれば、あなたをクルマのプロフィッショナルとしてお客さんがあなたに安心感を覚え始めます。
そうなってくるとお客さんの方から、ポツポツと質問が出始めます。
自信を持って、堂々と答えてあげてください。
さらにお客さんからの信頼が厚くなっていきます。
お客さんはあなたを、単なる「セールスマン」というポジションから、「クルマ選びのアドバイザー」というように認識を変えていきます。
最終的には「クルマ選びの先生」というポジションへ到達できれば最高です。
なぜならお医者さんからだされた処方箋(クスリ)を拒絶する人ってめったにいませんよね?
お客さんがあなたを「先生」というところまで認知してくれれば、あなたからの提案をお客さんは素直に受け入れてくれるようになります。
もちろんこうなるためにも日頃からクルマの勉強は欠かさないようにしてください。
カタログの内容をすべて把握しておくことはもちろんですが、業界雑誌や競合モデルの研究もしてください。
売れない営業の一番の原因は「商品知識の欠如」です。
お客さんの質問にいちいち「えーと〜〜だったかな?」とか「〜〜だったと思います」とあいまいな返事をしていてはいけません。
間髪入れずに「〇〇です!」と言い切ることがあなたの信頼度をどんどん高めていきます。
「信頼」とは、その名のごとく「信じて、頼る」ことです。
でも、簡単に、一朝一夕に得られるものではありません。
日頃からの鍛錬や勉強や練習の結果があなたの心の支えとなって言動のはしばしからにじみ出てくるものです。
お客さんに与えるものではなく、お客さんに感じてもらうことなのです。
信頼を獲得してお客さんを2塁まで進めることができれば、得点できる確率は間違いなくグンと高まります。
日頃から努力を怠らないように頑張ってください。