試乗中はあなたが先生

「それではスタートしましょうか。まずは左に曲がってください!」

これは、試乗中の1コマでの営業からのひと言。

どこのショップでもたいていは試乗コースが決まっていて、そこをグルリと回ってお客さんにクルマの感触を体感してもらっていると思います。

まさに毎日のように繰り返されているルーティーンワークです。

ところで、あなたはこの「試乗」というクルマをお客さんに実体験していただくデモンストレーションの練習をしていますか?

お客さんにとって初めて乗るクルマというのは、誰しも緊張する瞬間です。

ステアリングを握ってシートのポジションを自分に合わせている時、お客さんの期待も心拍数も最高潮に達しています。

あなたは冷静に、その操作を手助けするようにスイッチやレバーの位置をお客さんに伝えます。

そう、このあなたの「ジェントルで落ち着いた雰囲気」を演出することが大切です。

ほとんどの状況において、どんな新人営業マンでもこの時ばかりは営業マンが「先生」でお客さんが「生徒」という立場になります。

よほどのことがない限り、お客さんはあなたの指示に従います。この瞬間を逃さない手はありません。

試乗コースを下見せよ!

天才と呼ばれたレーシングドライバー「アイルトン・セナ」は、レースコースを歩いて下見し、視点をコックピットの近い位置にまで下げて微妙な路面のうねりやガードレールの切れ目などを人一倍入念にチェックしてドライビングのプロセスをイメージしていたそうです。

そこまでやれと言っているのではありません。試乗コースを周る上で、少なくともそのクルマの優れたパフォーマンスをもっとも発揮できるポイントを探ることをしてみましょう。

例えば、上り坂での加速性能を試したり、下り坂でのブレーキの能力、橋や道路の継ぎ目を越えた時の乗り心地、路地に入った時の見切りや駐車場での小回りの感覚。

これらをお客さんが望むままの成り行きに任せた試乗にするのではなく、あなたが優しく、でも堂々と誘導してあげるのです。

試乗中に絶対に言ってはいけないこと…

ポイントは、そのアクションに入る前に「結果」をひと言添えること。例えば

「もうすぐ道路の継ぎ目を越しますので、サスの感じが分かりますよ。すごくシッカリしてますから。」
ー タタン ー
「ほんとだ、けっこうシッカリしてるね!」

ここでも足回りが「カタイ」と言ってはいけません。

「タイト」というコトバも微妙です。お客さんの好みが分かっていればベストですが、ショップに乗ってこられたお客さんの車種から何かしら読み取れるかもしれません。

いずれにしても適切な「ポジティブ」なコトバを必ず選びましょう。人によっては「マイナス」に取られそうなコトバは使ってはいけません。

プラシーボ効果を使え!

とにかくお客さんはそれなりに緊張状態にあるので、あなたの直前情報に素直に反応する確率が高くなります。

お客さんの脳が、あなたの言葉に対して「そうなるぞ」と準備をしはじめるのです。

いわゆるプラシーボ効果のようなものですね。

感覚というのは、とても主観に頼るところが大きいので、あなたのコトバによって、お客さんがそのクルマに期待していた以上のパフォーマンスを感じてもらえるでしょう。

もちろん、試乗のステージを間違えて、パワーのないクルマに登り坂が多いコースを走らせたり、背の高いクルマにコーナーが右へ左へ連続するようなところを走らせたりすれば、いい結果が生まれる確率は下がってしまいます。

だからこそ、試乗コースの入念なチェックと、車種によっては試乗コースを変えたりして、そのクルマのもっとも美味しいところが引き出せるステージを作りましょう。

そして要所要所でお客さんに「アクセル深めに踏んでください」、「ブレーキ強めに踏んでください」、「ハンドル目一杯きってみてください」というアクションと「〜〜なりますよ」のポジティブワードを添える練習を徹底的にしてみてください。

ベストな試乗時間とは?

あまりプライベートトークは必要ありません。

あなたのクルマ屋のプロとしての自信に満ちたコトバや態度にお客さんが信頼を寄せることでしょう。

ちなみに試乗時間は、私の経験上15〜20分くらいがベストです。それより短いとお客さんの満足が得ずらく、逆に長いとお客さんの緊張感が解けてダレてしまいます。状況にもよりますが、ダラダラ試乗するのだけはやめましょう。

「もうちょっとドライブしてたいな」と感じるくらいがちょうどいいです。長くなればなるほど、お客さんは逆にクルマのアラを探し始めます。

小道具を活用しよう!

またトランク容積や荷室の広さが売りのモデルであれば、そのパフォーマンスが分かりやすいように、ゴルフバッグやスーツケース、クーラーボックス、折りたたみ自転車などの大道具、小道具を用意しておきましょう。

カタログで見るよりも実体験してもらったほうがインパクトがあって圧倒的に記憶に残りますし、あなたの誠意も伝わることでしょう。

その後の商談もスムーズに運べるはずです。

また、プラシーボ効果のところでも述べましたが、時間に全く余裕のないお客さんでない限り、試乗前にそのクルマの良さをお客さまにアピールしておきましょう。

特にすでに試乗された、あるいは購入された別のお客さんからの良い評価や、こんなところが良かったという具体的なポイントをお客さんに伝えておくことは、何も予備知識のないままに試乗してもらうよりも、良い結果を生む確率が高まります。

いかがでしょう?お客さんが試乗を終えた時の興奮度や感想が随分と良くなっていませんか?

「試乗」はクルマとあなたをお客さんにアピールできる千載一遇のチャンスです。

その後の商談を優位に進めるためにも、ミスの無いように繰り返し練習しましょう!スタートからフィニッシュまで、1つの演劇のように見立てて、お客様の心を鷲掴みにしましょう。

その精度が高まれば高まるほど、成約率も高まるはずです。

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